第4章 色舞海(しきぶかい) −2008−


遥か昔 世界の(ほとん)どが海で(おお)われていた頃の話


広大な海は 世界の中心・蒼天(そうてん)より東西に二分され 二頭の龍が()み支配していた


西に緑龍・(へき)(らん) 東に紅龍・()(えん) 二頭は双龍(そうりゅう)と呼ばれ その勢力により世界は均衡を保っていた


蒼天(そうてん)より続く東西の海境には (わず)かな大陸と島々が連なり この一線を黄閃(きせん)という

果てしなく続く海原 数百年に一度 黄閃(きせん)上にて双龍(そうりゅう)が出遭うとき 世界に災いを(もたら)すといわれ 人はこの災いの日を如無(しきぶ)と呼んだ

この時代 幼き頃に生き別れた兄妹(きょうだい) 十年後の再会を誓い黄閃(きせん)に生きる

永い時間(とき) 互いに知らぬ地で暮らす兄・(あお)()と妹・(あか)()

そして誓いの日 (あお)()(あか)()は約束の地・蒼天(そうてん)へと向かう

再会まで一里一刻というとき 運命の悪戯(いたずら) 兄妹(きょうだい)(さき)んじ双龍(そうりゅう)が出遭う

双龍(そうりゅう)雷雲(らいうん)を呼び竜巻(たつまき)を起こし 黄閃(きせん)の大陸と島々は荒波に飲まれ無と化した

そして兄妹(きょうだい)の誓いも(はかな)く散る

しかし 天より(うかが)いし神により 兄妹(きょうだい)は天に()され 神使(しんし)として双龍(そうりゅう)(つか)わされる


(へき)(らん)(あお)() ()(えん)(あか)() 二人の神使(しんし)降臨(こうりん)により 双龍(そうりゅう)は争いを止め 海も静寂を取り戻す

それ以来 双龍(そうりゅう)神使(しんし)は共に生き そして数百年に一度の如無(しきぶ)の日は 兄妹(きょうだい)の再会の喜びにより 海は色を帯び その波は華やかに(さざな)

後に 如無(しきぶ)の日の海は色舞海(しきぶかい)と呼ばれ この日に交わす約束は必ず叶うという


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